百に一つは

              
「いつも野良さんが寝ているところへ　しゃがんでおりますが　　実は私　近くの新興住宅の宿ありでございます　　　一段高いところから　春の風を感じながら　辺りを見下すのは　実に気分のいいもの　　　野良さんの方が恵まれたところが　百に一つくらいは　あるような気がします　」

春の憂鬱

        
「暖かくなって嬉しいが　当然いいことばかりじゃない　　散歩のイヌも　人間の子供も増えてくる　　ちょいと石垣の上に逃れて　やり過ごせばよいようなものが殆どだから　いいけど　」

ホースの季節

              
「墓場の端の　お寺の建物との間にいます　　風が当たらず日が当たる　　良い場所です　　　ところで　水道の下に　ぐるぐる巻いたホースがあるでしょ　　ホースなんて名前も　何に使うものかも　忘れてしまいそうです　　　毎日大活躍する日が続くのも辛いものですが　氷が張る季節より　草木が水を欲しがる季節が　来て欲しいです　」

ＯＫ牧場

                
「ＯＫ牧場の柵も　こんな感じかなあ　」
『ＯＫ牧場って　あの　昔の話の　アメリカの　あの方？　』
「そうそう　　ボクシングと関係無い方 」
『そら　柵も　気候も　景色も　もっともっと荒くたい所やと思うで　　　寒うても　ここがええ　』
「そうかなあ　　そうやろな　　春がはよ来んかな　」

ネコ道

  
やせネコさんがしゃがんでいる　すぐ手前を右から左へ　サクラの根方を　巻くように続いている帯状の裸地　　　サクラの根方から　カメラに向かって続いている　ツバキの花が落ちている帯状の裸地　　　これらはいずれも　ネコさんたちの頻繁な通行におよって生じた裸地　　　つまりネコ道なのであります
「それがどうかしたか」

まだ真冬の気分

        
暖かくなれば　溝中心の移動になるのですか？
「そうなんだけど　まだちょっと先の話で　そんな気分になれませんよ　」

風が和めば

  
「日差しは確実に強くなっているから　風が和めば　春気分だ　　脚が勝手に動くから　不思議だね　」

毛色が良くても

        
レッドタビーとか赤猫とか　呼ばれるのにふさわしい　納得の赤い縞ですね
「毛色が美しくても　汚くても　　野良になったんじゃ同じことです　」



        
縞模様がほぐれて　薄茶の毛に飲み込まれたようで　　原型のアグーチと呼ばれるのが納得できる　珍しいお毛並みですね
「毛並みが美しくても　珍しくても　　野良になったんじゃ同じことです　」

強い子だから

  
「オッチャン　おれ　頑張ってるだろ　頑張ってるよねっ！　ねっ！　」
分かっていますよ　トラちゃんは良く頑張っています　　トラちゃんは良い子だから　　トラちゃんは強い子だから　　きっと立派な野良猫になると信じています　これからも　楽しみにしています

カラスが邪魔して

  
かつては畦だったのか　畦のようにチガヤが続いているところで　　スズメが何かをつついています　　遮蔽物が無いので不利ですが　ネコは結構真剣に　忍足で近づいていきます


  
ところが 　上空でカラスが騒ぎ　すずめは逃げてしまいました　　ネコはどうも不満げに　スズメのいた辺りに座っています

ＰＭ７.５

        
「快晴やというのに　この霞み具合や　　PM7.5が来てるんやろな　　ネコにマスクは無いし　やばいけどしゃあない　」
ネコさん　ちょっと違ってますよ

超暖かい日には

  
おばちゃん　　春に備えて　ハンティングの　肩慣らしかいな
「違うんよ　　確かに　何か動いてん　　真冬でも　めちゃ暖かい日には　ヘビやトカゲが日光浴することあるねん　」

うまくいかない

  
「元ボス　　こんな生き方って　生まれつきの病気やな　　全身傷だらけで　もう先の長くないのは　分かるけど　　すぐにお迎えが来るわけでもない　　最後まで　うまく行かんもんやな　」

決意

  
「母さんのためにも　　寂しくても　ひもじくても　俺一匹で生き抜いてやるんだ　　オッサン　見ててくれよな　」
分かりました　　あなたが立派な野良猫になることを　祈っています

母の面影

  
母さんは逝ってしまったようで　近頃姿を見かけません 　　物置小屋とその周辺に　母の思い出があるのでしょうか　　何か考え込むような顔で　あちこちを見つめています



  
甘えるんじゃないって 　　これからは　おまえ一人で　生きて行かねばならないのだから

大寒波

  
「50年か100年に一度の大寒波　なんて言われても　　他に行くところがあるじゃなし　結局　いつものここで頑張るよ　」