裏口

  
「表の玄関に回るには　まだ一上りせねばなりません　
　　ここで一休みして　汗を拭いて　呼吸を整えて行かれてはどうですか　
　　　おやつなどお持ちでしたら　それが一番かと存じます　」
有難うございます　　ご心配は有難いですが　このままもう一登りいたします

藪に入るな

  
「かあちゃん留守や　　来たらあかん　来たら逃げる　」
脅かすつもりは無かったのですが　失礼を致しました　　　道端で　帰らせていただきます

曲線のガレージ

  
この　曲線を生かしたモダンなガレージは　ネコさんのおうちですか
「う～ん　　　オレ　地域ネコ
　　主にここ三軒で飼われてるんだ
　　　このガレージは　オレの部屋　てとこかな　」

世捨てネコ

  
あの橋の向こう　あれごっついネコやな
あのネコ写して　あれ　あれあれ
ごっついなあ　あれがボスか
う～ん　　大きくて強いけど　世捨てネコだから
　相手が強くても　かまわず進んでくから　よくやられてる

まあぼちぼち

       
ねえさん元気？　　調子はどう？
「ロープウェイが出来たら　お客が増えるのを　期待したけど　
　　どちらかって言うと　向こうに　お客を　取られたって感じね　」
人が増えりゃ良いって　ものでもないでしょう　
「そうそう　　お土産持った人が確実に来てくれたら　ほかの人間なんて　ほこりっぽいだけよ　
　　そう思えば　　ぼちぼちってとこかな　　まあ　有難いことです　」

人を見る目

  
『パパ　　人のよさそうなのが来てるよ　　ええのん　』
「ああいうのはな　相手になって　怪我もせんけど　得にもならん
　　　　　　　　　おまえにはまだ難しいけど　大人になったら分かる　」

猛暑の夏

  
「だいぶ　秋っぽくなったかな　」
　それでも　お彼岸は　まだ一月先やで
「そうか　まだ楽はさせてくれんか　　　寒いよりましやと思ってたけど
　　近ごろ　暑さで　ボケたような気がするわ　」

お彼岸前日

  
「今日は　どうしてこう　墓参りが多いんだ　　　広い墓場に　身の置き場がない　ありさまだ　」

フライデー

  
「わっ　見つかってしもうた　　フライデーおやじや　」
『こんな藪の中まで・・・・　　　犬に蹴られて死ね　オッサン　』
犬では　なかなか　死ねんやろ
『それを　無理に頑張ってでも　死ね言うこっちゃ　』

藪にゴミ

  
「どんどん　こっちへ来るけど　　藪にゴミ　捨てるなよ　　ビンなんか　投げるんじゃないぞ　」

夕涼み

       
「夕涼み　なんて　言葉があったけど　　今じゃ　夜明け前でも　涼しくは無いな
　昼間は　活動なんか出来る状態じゃないから　　薄暗くなってから　夕涼みじゃなくて　活動開始だ　　　ずっと寝てたいけど　食わなきゃ死んじまうし　厄介なもんだ　」

子育て

               
「お母さん！　　女なんだから　もう少し気をつけてよ　」
『気にしない　気にしない　　　そんなこと　気にしてたら　子育てなんて　出来ませんよ　』

花より早く

  
「大人は永くても　　恋の命は短かくて　　　桜より先に散ってしまいました　」

大人は永い

  
「おれたち　ブ～ンだ　」
　　　　　　『グ～ン　よね　』

  
「三年先も　五年先も　大人だ　　　大人は永いぞ　」
『私たち　どうなってるのかしら　』

市の土地

  
おい　ネコ　　そんなとこに座って　何しとるんや
「何もしてないよ　　座ってるだけ　」
そこは市の土地やから　ネコは無断で通るな
「その市の土地で　野菜や花を勝手に作ってるのは　あんたじゃないか　」
市が何もせんから　わしらが花作ったってるんや　　花の美しさなんて　ネコには分からんやろ
「だったら　私だって　　のっぺらした土地に　山や谷を作ってあげてますよ　　山水の趣なんて　オッサンには分からんでしょ　」

親に似ないで

           
「よかったねえ　　おまえの毛が　長くならなくて　ほっとしたよ　」