落す物

   
「この車は車高が高いので　どちらの方向にもすばやく逃げられる　　ところで　逃げる前に　おっさん何か落とすものないのか？　　なさそうやな　」

新車

   
「新車やねんて　　新車やから汚したらいかんいうて　乗ったらえらい怒るねん　　花が咲いたようで奇麗やと思うのにな　」

明石焼

   
「タコの石焼ではなくて　明石焼　　　開店までまだしばらくかかりそうだから　寝て待ちましょう　」

シャッター音

         
「そのバシャバシャいう音が雰囲気壊すんや　　もうええやろ　」

遠出

   
「春やなあ　　カメラのおっちゃん行動範囲広げたな　ここまで来るか　」
それを言ったらお互い様でしょうが


   
「いつものと違うな　今日は小さいカメラやな　　距離が長いから楽なのにしたな　」

陰の季節

   
「あれだけ日向が有難かったのに　屋根が有難い季節になった　」

孫

                   
「もうすぐ孫が来ます　　100数えたけどまだ来ませんね　　私の体が全部陰になる頃来るはずです　もう少し左に寄りましょうか　」


                   
「道がよく見えるところに　出てみることにしました　」


   
「おお～っ　　よう来たよう来た　よう来たねえ　」
『ばあちゃん　元気っ？　』
「元気だよう　」

昔はよかった

   
「“昔はよかった”なんて思うようになってしもうた　　確かに　ガキのころは震災の傷跡がまだ残ってて　野良猫にとってはその方が住みやすかったけど　」

知らぬ人

         
おはようさん
「おはようニャン」

         
『わわっ！　　ヒトや　知らんヒト　』
足音も声もしてるんやから　ネコなら気付けよ

家ノ裏

         
山すその家々は奥行きが取れなくて　家と家の間が“裏”の様相を呈し　　野良ニャンコの置物??がよくなじんでいます

お帰りには

   
「おはようニャンです　　看板は出揃っておりますが　商品はまだ整っておりません　　お帰りまでには準備できるかと思いますので　お帰りには是非お立ち寄り下さい　　　店主代行　敬白　」

初夏の石段

   
カメラザルの声に耳だけ向けて　毛づくろいを楽しんでいます　　初夏の石段はネコのためにあるようなものです

踏み跡

   
「こんな所　ヒトが通るんかい　」
そりゃ　踏み跡があるってことは　だれかが通るんだよ

ねこばば

         
「もっと土入れてよ　　こんな少ない土で　ねこばば出来ないでしょ　」

じいちゃん

   
お取り込み中ですが　そちらの大きな茶白のネコさん　　もう二十年ほど前のことですが　あなたによく似たネコさんと　この辺りでおなじみでした
「えっ？　　おばちゃん古いことよう知ってるなあ　　俺のじいちゃんかも知れんな　」
また二十年ほど先に　あなたによく似たネコさんと　この辺りでお会いできるとうれしいですね
「ほんまに　」

しっぽ踏んだ

           
「おい　　はよ行け　さっさと行け　」
『こうして　町の様子を眺めながら行くのがええのやないの　』


         
『あっ　しっぽ踏んだ　』
「わるいわるい　許せ　わざとやない　」
『わざとやっ！　　あんたはそういうネコや　』