人あっての野良

  
「この家のおネコ様のような顔で　玄関先から世間を見ておりますが　私は野良でございます　　玄関も　屋根も　庭も　自由に使わせていただいて　有難いことですが　　やはり　家には人が住んでいないと　さみしいものです　　餌をもらうことも盗むことも　ヒトあっての話ですから　」

こんにゃく

  
「俺を写すんなら　こんにゃく買っていけよ　　損はしないんだから　
　　買わないんなら　モデル料　よこせ　　」
分かってますよ　　必ずこんにゃくを買いますから　もう一枚お願いします

色んな思い

  
塀の上で　何しとるんや
「寒いのは寒いが　だいぶ日の出が早くなって　勇気付けられるな　と思うし　
　ガレージの屋根が家の方に傾いてるのは　降った雨が　出来るだけお隣に落ちないようにする　心遣いかと思うし　
　モクセイの木は　葉に毒があるそうやから　　ネコには関係ないけど　好きになれんな　と思うし　　　切ってしまえとまでは言わんけど　
　ブロック塀が地震のときに危ないそうで　作り変えが進んでるらしいが　その際巾の企画を内外各１センチ広げてくれんかな　と思うし　　２センチ広がれば　歩くだけでなく　寝るのがうんと楽になるし　」
おまえの話　みごとに　バラバラやな

隣の団地

  
その　木が茂っている中は　どうなってるのですか
「別にどうもなってないよ　普通に落ち葉が積もってて　おれたちが通行するネコ道が出来てるだけ　
　おれたちは　簡単に行き来するけど　　溝があってフェンスがあって　その向こうは　隣の団地の一番奥になってるんだ　」


  
「時々　配達の人なんかが　ナビでここまでやって来て　　思案したり　ため息ついたりしてるよ　」

寒くてもお日様

  
「心頭滅却なんか出来るわけ無いんだから　　　それでも　冷たい風にさらされてここに座ってるのは　寒さ以上にお日様が恋しいから　　我慢してるだけ　」

女はつらいよ

  
ネコさん　またおめでたですか
「そうなんよ　　この不景気　この寒空にね　　　女はつらいよ　」

春には治るはず

  
ネコさん　調子悪そうですね　　毛並みも乱れてるし
「調子ね　　　好くないね　」
どう悪いのですか
「鼻が悪い　　寒気もする　　やる気がしない　　空腹なのに食欲がない　」
それは困りましたね
「毎年冬はこんなもんや　　桜が咲いたら治るはずや　　それまで　生きとらな　あかんけどな　」

純白もいるよ

  
「野良猫と言うても　　こんなに美しい純白のネコもいるということを　しっかり宣伝しといてな　」
白は白ですが　純白という言葉が当てはまるかどうか　それにその顔でしょう　
　少なくとも　野良猫のイメージを超えるとはいえませんよね　

墨汁をこぼした

  
「雑巾猫　と言いたいのやろうが　　こんな　白黒はっきり分かれた雑巾は無いやろ　」
そうですな・・・　　墨汁をこぼして　新しい雑巾でかまわず拭いたのでしょうな
「そこまで雑巾にこだわるか　　　“乳牛のような柄ノネコ” くらい言えんか　　話をきれいにまとめるセンスが無いのやな　」

雑巾猫

            
こちらはと言うと　疑う余地なき野良さん　　　いわゆる雑巾猫さんです
「チェッ！　」

美猫は美猫

            
地域ネコには　お嬢さん風もいるよな　　風だけどな　
「風で悪かったわね　　この顔は　生まれつきなんだよ　」

            
家ノ前で　胸張ってると　　ここのお家のお嬢さんに　見えるじゃん　　
「うるさいね　　持って生まれたものを隠しきれないんだ　ミーハーおやじが　」

ニャン相の緩み

     
「オレ　地域ネコ　　　このガレージが本拠地やな　」
生活の心配が一応無くなると　野良らしいピリッとしたところが無くなるな
「それを言うな　」

年越しまでは

  
ネコさん　超寒いのに　寝てばっかりおったら　よけい寒いで　　　一緒にドドドッと走ろうや　今年は亥年なんやから　
「今年は亥年やけど　元日から年越しまでは毎年ネコ年や　　　おじいちゃん　言うてた　」
ええっ？
「平成三十一年みたいなもんや　」
たとえられると　よけい分からんようになる　
「ネコ年の間は　特に寝て暮らすことにしとるんや　　　あんた　わしの分まで走っといて　　友達やろ　」
めまいして　走れんわ　

事情は複雑

              
ネコのオッサン　“寒くなったら　こんな所にへたってられん” 言うてたのに　寒くなっても　アスファルトにへたってるやないか
「う～ん　そうやねえ　なんていうか　
　　おまえさん　トランプに “出て行け！” いわれるタイプやな　
　　　後の草の上に行きたいけど　自転車が倒れるのが怖くて　結局ここになるんや　」

飼い猫にも苦労

  
「家を出て　橋を渡ればいきなり道路だ　
　　少し時間をかけて　体を寒さに慣らしてから渡らないと　人や車に反応できない　
　　　贅沢な苦労といわれるだろうが　飼い猫にも苦労はある　」

犬は厳しい

  
ネコさんは　飼いネコさんなのですね
「そうは見えない　て　言いたいんだろ　　こんないじけた俺でも　ネコはまだ飼ってもらえるんだから　有難いことさ
　ワン公の方は厳しいようだね　　捨てられても野良が務まるような奴は　殆ど飼ってもらえなくなった　
　　お庭のドッグランとかで　ぬいぐるみが駆け回ってる姿を見ると　　うらやましくもあり　哀れでもあり　」